大國神甲子祝文
地津主、大己貴神夫甲子とは、氣の榮る根を云ふ。根待は、普く地を祭事ぞ。地は則妻なれば、是を祭るを寝交待と云ふ。然り、心善く子孫を授け老ひて大國神の德に叶ふ。謹み謹み惶み惶み申す。古へ此國荒芒の世、磐根、木根立、草の片葉も能強暴の時、天下を經修給ふは國作大己貴神と申す。武く強き勢ひ在ば、葦原の醜男と申し、天の廣戈を振り立て、邪悪を撥平語問し木草の類を摧き伏せ給ば、八千戈の神と申し、諸の不和順神等を和順國を持給へば、大國主神と申す。此神の住せ給へる宮は、千尋の拷縄を以て結て、百餘八十結び、柱は高く太く、板は廣く厚く、高橋浮橋打橋鳥船、百餘八十縫の白楯有、又、祭祝の主さ、諸の司に而備れば、大物主神と申す。神光海原に、照之幸魂奇魂を三諸山に鎮め給へば大國玉神と申し、治世顯露の事を皇孫尊に依し奉り、神事を治め給ふ御身に瑞の八坂瓊を被寂然長隠給へば、顯國玉神と申す。顯見蒼生及畜の為に、其病を療る方を定め、鳥獸昆虫の災を拂ん為に、其禁厭る法を定め給ふ。是を以て百姓今に至まで皆恩賴を蒙れりと、稱辭竟奉り、宇豆の廣前に宇豆の御膳、宇豆の御酒、宇豆の御幣を朝日の豊榮登に捧げ奉。平けく聞食と申す。寶祚天壤と究り無く、百姓安く穏かに、某姓名等の家の内諸の災難なく、萬の幸ひ給へと、夜の守、日の守、愚なるは猶も惠み幸給へと、謹み謹み惶み惶み申事の洩落ん事、神直日大直日に見直し、平げく安けく左男鹿の御耳を振立て聞食と申す。